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一流の接客術

現代では、お金さえあれば欲しいものはなんでも手に入る時代になりました。有名メーカーでも、他社とほんの少しだけ機能が違うくらいのモノを同程度の価格で出しており、どの業界も似たような商品で溢れかえっています。裏を返せば、それだけ他社との差別化が難しい時代になってきたということです。
どこも同じような商品で同じような価格だった場合、消費者は何を決め手にして商品を選ぶのでしょうか。答えは接客です
どれを買っても値段も機能も大差ないのであれば当然そうなります。さらに言えば、たとえとても美味しくて他にはない料理を作る店であっても、酷い接客を受ければ二度と行くことはないでしょう。

それは農業界も一緒です。
農業は一人または家族で黙々と野菜や果物を作っているイメージが強く、一見接客なんてなさそうです。しかし、作った生産物はお客様に売ることで初めてお金になるのです。
たとえば、農協を通さない経営方針だった場合、小売店やお客様に直売することになりますからそこには接客が関わってきます。顔の見えないネットでの販売であっても、接客をおろそかにするとリピーターにはなってもらえません。
また、農業という括りの中にも観光農園であったり、自分で栽培した野菜などを使ってレストランや小料理屋を営むようなやり方など様々な形があります。そして、そこにも必ず接客が必要になってきます。
現時点では、「自分は農協にしか卸すつもりはないからお客様とは関わらない」と思っていても、そのうち観光農園がやりたくなったり、直販の方が収益がいいからと経営方針を変えることもあるかもしれません。
そういった意味でも接客を勉強しておくことは損にはなりません。むしろ、年齢を重ねて考えが凝り固まってしまう前に少しでも触れておくのがいいと思います。

今回はそんな接客の心得を学べる本【接客の一流、二流、三流(七條千恵美 著)を紹介したいと思います。
長年キャビンアテンダントとして働き、皇室チャーターフライトのメンバーにも抜擢されたほどの接客術を誇る著者が、接客のイロハを「一流なら、二流なら、三流なら・・・」という三段階で書き綴っている本です。
今回はその中から、観光農園の運営で使えそうなものを紹介していきます。

良い接客をされると嬉しくなりますよね!「またここを使ってみたい!」って思わせてくれます!
良い接客は、接客する側もされる側もハッピーにさせる最高の術(すべ)です。ぜひ学んでみましょう!

本の概要

キャビンアテンダントとして18年間勤めた著者が接客のイロハを「一流ならこうする、二流ならこうする、三流ならこうする」と三段階で説明している本です。
接客は、全ての業種に通ずるスキルなのでとても勉強になります。
章ごとの目次は以下の通りです。

  • 第1章:一流の「考え方」とは?
  • 第2章:一流の「外見力」とは?
  • 第3章:一流の「察知力」とは?
  • 第4章:一流の「会話力」とは?
  • 第5章:一流の「対応力」とは?

たくさんの接客術が載っていますが今回は農業ブログらしく、観光農園でも使えそうな接客術・心得に絞って紹介していきます。
将来観光農園を考えている方はぜひ最後まで読んでいってください。

一流の「考え方」とは?

お客様は神様?

今では会社ごとにマニュアルがあり、その通りに接客をする人も沢山います。むしろ、そうしろと会社から言われることの方が多いかもしれません。
しかし、本当に良い接客というのはそういった機械的な接客ではなく、相手のためを想い真心をこめた接客でしょう。
本書では、マニュアルに従うだけの機械的な対応は三流、「お客様は神様だ」と考えてとにかく媚びる接客は二流と言っています。また、「最高の接客と感動を!」というような熱い想いを前面に押し出した接客も”自己満足的なサービスだ”と捉えかねられないので状況に応じて使い分けていく必要があるとも言っています。積極的な接客を受けるのが苦手なお客様も沢山いるからです。
ここで一番大切なのは、「目の前にいるお客様が今何を望んでいるのか」ということを常に追いかける事です。そんなとき一流は、お客様を「大切な家族だったら?」と考えます。
目の前のお客様を「家族」や「大切な人」だと思って接客をすることを心がけてみてください。相手に親身になることで、今何を望んでいるのか何を望んでいないのかが分かってくるでしょう。
ただし、距離感を間違えないように注意してください。

こちらがいくら丁寧に接客をしても的を射ていないとただの自己満足な接客になってしまいます。
常に相手が今何を望んでいるのかを考える事は接客の基本ですね!

商品の説明

プロであるならば当然じぶんの売っている商品の知識はあるはずです。アルバイトだとしても「たぶん、○○だと思います」という返事では無責任だと言わざるを得ません。
しかし一方で、聞いてもないのに自分の商品知識を畳みかけるように説明する人もいます。そしてそういう時はおうおうにして、早口であったり、専門用語を多用したりとお客様が理解しているかどうかは二の次で説明していることの方が多いです。
商品知識は、それを買おうか悩んでいるお客様に正しく伝わってこそ意味を成します。
そこで一流は、「相手に役立つように説明する」ことを意識しています。
どのように説明すると分かりやすいだとか、どのタイミングでその話をすれば効果的なのか、どの場面でご案内すれば喜んでいただけるのかなどを意識し、専門用語などは相手が理解しやすいように言い換えたりと工夫をしています。

こと細かに全て一気に説明するより、相手の理解に合わせてスピードを合わせるなどすると、より信頼を得ることができるし質問もしやすくなりますね!

一流の「察知力」とは?

お客様の仕草を見逃さない

皆さんは飲食店で店員を呼ぼうとした時、目くばせしても気付いてもらえず、手を上げても気付いてもらえず、最終的に「すいませーん!」と大声を出す羽目になったことはありませんか?
それとは逆に、目くばせだけで気付いてもらえて「できた店員だ!」と思ったことはありませんか?
これが三流と一流の違いです。
三流は「声」で気付き、二流は「手」で気付き、一流は「目」で気付きます
もしその時に他のお客様を対応していたとしても、「自分に用事がある」という視線に気づいたなら、こちらからもアイコンタクトで「お呼びですね、すぐそちらに参ります」という意思を伝えるだけでもお客様は安心してお待ちになることができます。
また、お客様の目線のその先や仕草などからも要望を察することができます。頻繁に時計に目をやるようなら急いでいるのかもしれませんし、お財布を取り出していたらお会計かもしれません。こちらと一切目を合わさず落ち着いている様子なら、放っておいて欲しいのかもしれませんので、頻繁には接しないようにするなどです。
声をかけられずとも常にアンテナを張り、お客様の気持ちの変化を知ることに努めましょう。

目くばせだけで店員さんがきてくれると嬉しいですよね!
なるべく視野を広げ、お客様の変化を見逃さないようにしたいものです。

音からも情報を掴む

商売をしている以上クレームは必ず受けるものです。そしてお詫びをした際に、お客様から「もういいよ」や「大丈夫です」と言われ「それで良し」と思っていては一流とは言えません。
声の大きさやトーンの違いから「本当に納得していただけたのか」を推し量り、それ相応の対処をしましょう。納得いかないままお客様を返してしまったらリピートはしてくれませんが、たとえクレームを受けても、誠意を伝えて納得していただけたお客様はきっとリピーターになってくれます
また、自分たちが出す音にも注意が必要です。何かを用意するたびにガチャガチャうるさかったり、ドタンバタンと大きな音を出していると、モノを大事に扱っていないと思われますし、不愉快な印象を与えてしまいます。
なるべく自分が発する音は小さく、周りの音に耳をすませるようにしてください。

観光農園のように広い場所では遠くから呼ばれることもあるでしょう。そんな時のために音や声を注意して聞くようにしましょう。

一流の「会話力」とは?

感謝の伝え方

接客をするならば「ありがとうございました」という言葉は欠かせません。しかし、マニュアル化された接客や相手とほとんど会話を交わさない接客形態の業種だと、”機械的にただ言っているだけ”になりがちです。
まず感謝の気持ちは、相手の顔を見て言うのが最低限の礼儀です。そしてそこに笑顔が添えられるのが自然でしょう。しかし、それだと二流どまりです。
一流の接客は、「何についての感謝の気持ちなのか」も明確にして伝えます
「○○をしていただきありがとうございます。」というように具体的に感謝の気持ちを表現しましょう。またその時に「遠くからお越しいただいて」や「わざわざ○○までしてただいて」など、相手の労を労い、その手間に対しての感謝も伝えるとなお良いです
これは接客でなくとも、普段の生活から周りの人にも同じように接することで、よりいい人間関係を築いていく事ができます。

お客様じゃなくても、自分の周りの人たちへも普段から具体的にお礼の言葉を言う習慣をつけるといいと思います。
私も意識してみたいと思います!

記憶に残る会話

お客様と話すことを主とした接客では当たり前のように行われていますが、そうでない場合もぜひやった方がいいことがあります。それはお客様ごとに個別の話をすることです。
一流は常に「オンリーワンの会話」をするよう意識しています。
ありきたりな雑談も必要ですが、やはりその人その人で話す内容を合わせていった方がいいのは言うまでもありません。お客様の持ち物や好きなものなど、お客様ご自身のことを聞かせていただきましょう。
これは当然相手の記憶には残りますが、こちらが覚えておくためにもとても効果的なのです。相手からすれば自分は店側の何人かの一人なので覚えやすいですが、こちらからすると何十人何百人というお客様の中の一人ということになるので、一人ひとりと同じ話をしていたら絶対に覚えきれません。
さらに言えば、次にそのお客様とお会いした時に前の話を覚えていると、「ちゃんと話を聞いていてくれたんだな」と、とても喜ばれます。逆に忘れていた場合はとても残念がられ、不快にさせてしまうのでお話しした内容は忘れないように注意してください。

私の知っているコンビニでも一人ひとりのお客さんと話しているところがあり、やはり人気というかリピーターがたくさんついています。
逆に、毎回前回の会話を忘れて同じ質問ばかりしてくる美容師さんがいたのですが、やはりすぐ行かなくなりましたねw

一流の「対応力」とは?

質問の意図を汲み取る

質問を受けた時にイエスかノーだけで答える人はいないと思います。最近のお問い合わせAIでさえも代替案を提示してきたりするものです。
しかしこちらは人間です。人間の機能をフルに使いAIには出来ない接客をして差をつけましょう。
一流は質問に対して「不安を解消するように回答」します。つまり、「なぜその質問を投げかけてきたのかを考え、それについて答える」ということです。
例えば、大きな駅で赤ん坊を抱っこした人に「トイレはどこですか?」と聞かれたときに、AIなら駅構内のトイレを全て表示させるでしょう。普通の駅員でも一番近いトイレを答えるかもしれません。しかし一流は、一番近いトイレと赤ん坊のおむつ替えも可能なトイレも一緒に教えます。
このように、質問に至った背景や不安要素も汲み取ることはAIには出来ない人間ならではの接客になります。ただし、状況によっては失礼に当たることもあるので、そのあたりも判断しながら回答するのが好ましいです。しかし、その判断も人間にだけできることなのです。

一歩間違うと”余計なお世話”になってしまう可能性があるので難しいところですが、それもよく考えれば回避できます。
人間にしかできない方法で真心のこもった接客を心がけていきたいですね!

「迷惑だ」の言い換え

お客様には色んな方がいます。時には他のお客様の迷惑になるような行為をされる方もいることは事実です。
そんな時にストレートに「他のお客様の迷惑になりますので・・・」と伝える事も間違いではありませんが、一流としてはお客様には恥をかかせたくありませんし、そのお客様とその後わだかまりができてしまうかもしれません。
そういった場合は「ご協力いただく」という姿勢で臨みましょう。というのも、命令形で注意を促すよりその後のわだかまりが小さく済みます。「自ら協力した」という形に持っていくことで、お客様に恥をかかせず気持ちよく協力してもらえるのです。
大声を出してうるさいお客様には「今日は何のお集まりですか?楽しそうですね」と声をかけ「もしかしてうるさかったですか?」という言葉を引き出すなどして土台をつくり、「お楽しみのところを気を遣わしてしまい申し訳ございません。ご協力ありがとうございます」などと締めくくりましょう。

所感

さすが皇室チャーターフライトのメンバーに選ばれるわけです。学ぶべきことがたくさんありました。
今回は観光農業に使えそうなもの数項目に絞りましたが、本書全編だと45項目以上が掲載されています。正直、「ここまでやるの?」っていうのもありましたが、やらないよりは絶対にやった方がいい事しか書いていないので、全てを意識できるようになればどんな接客でも上手くこなせるようになるかと思います。
なんといってもこの本に書かれていることの良さは、仕事上以外のプライベートでも使えるテクニックもたくさん載っていることです。
今から人脈を広げていきたい方は出来るだけ身に付けておいた方がいいでしょう。人間関係がスムーズに回ります。
この方がやっているマナー研修に参加してみるのもアリでしょう。私も少し参加したくなりました。
「お客様は神様だ」という言葉が独り歩きしている日本ですが、それとは違った、さらに上のレベルの接客を目指していきたいものです。