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独立就農の前に勉強しておく9つのこと

「独立就農はしたいけど、いきなり出来るか不安」、「どこかで修行とか研修を受けた方がいいのかな?」「独立するにはどんなスキルが必要なの?」

将来的に独立就農を目指している方の多くはこういった悩みはつきませんよね。私もそのうちの1人です。
今回は、独立就農に向けて「どういったスキルを磨いていくのがよいか」、「どういった経験を積めばいいのか」、「どうやって心構えを養っていくのか」などをズバリ教えてくれる本【稼げる!新農業ビジネスの始め方(山下弘幸  著)を紹介したいと思います!

この本の著者は、”農業会社に勤めながら独立起業の準備をする”というアプローチで独立就農を目指していくのがベターだと言っています。

この本を読めば、農業会社で経験しておくべき様々なポイントや考え方が学べますよ!

本の概要

この本は、”農業をビジネスとして捉える”という主旨を軸にした本です。
章ごとの目次は以下になります。

  • 第1章:農業で成功するためのキーワードは”ビジネスセンス”
  • 第2章:我は農業界のジョン万次郎なり
  • 第3章:農業会社に勤めてガッチリ起業準備をする
  • 第4章:農業起業してガッチリ個人事業者になる
  • 第5章:めざせ!農業コンサルタント

今回は、第3章の”農業会社に勤めてガッチリ起業準備をする”から抜粋して記事にまとめました!

この本は全体を通し、農業がビジネスであることを論じ、最終的に”作物を作らない新農業ビジネス”の話にまで発展するという、とても経営的な内容になってます。

もしあなたの目指すものが、「田舎でのスローライフ」ではなく「農業で稼ぎたい!」ということであれば、こちらの本はオススメです!

農業なら自分の人生が描ける

「農業の魅力は何ですか?」という話になると、「そうですね、収穫する喜びですね」などという答えになりがちです。
確かに収穫の喜びはあります。しかしそれ以上に、農業の魅力は「自分の人生を描けることにある!」と著者は言います。

現代の社会では、ほとんどの人が自由な生き方が出来ていません。他人が決めた時間に出社し、他人が決めた仕事をこなし、他人が決めた休憩時間に休み、他人が決めた退社時間まで会社にいなければならない。時には他人の失敗が自分にまで影響してくる。
自分の人生を他人に描かれてしまっている現実
「この仕事を任せるから自由にやってくれ」と言われても、結局はその会社のルールの中で自由にやってもいいという話で、本当に自由にすることは許されない。
その点、農業では何時から何時まで作業をするか、何を育てるか、どの程度の規模でやるか、それらを調整して収入をいくらくらいにするかなど全部自分で決められます。エンドユーザー相手の場合は、お客様の要望をある程度考慮する必要もありますが、その対応策も全て自分で考えることができるのです。組織でよくある”上が勝手に決めたくだらないルール”などありません。
確かに、自分ですべてを決められることは大変なことでもあります。しかし、自分の仕事や生活、人生の流れを全部自分で設計することは、自分の人生を生きているということです。

ただ、農業を個人で始めるとなると、軌道に乗せるまでに5年~10年はかかります。
「10年もかかるんじゃ大変だ」と思いますか?しかし逆を言えば、物事の移り変わりが早いこの時代に、今就いている仕事が10年先にどうなっているか読めるでしょうか。ほんとうに将来性のある仕事かどうかを判断するのは難しいはずです。
農業は、人間が必須としている”食”に関わっています。そういう意味でも、10年後を考えた場合、農業は将来性があると言えるのです。

とはいえ、農業未経験者がいきなり農業をして食べていくのは難しいでしょう。そこで著者は、いちど農業会社に就職する方法を紹介しています。

衣食住の中でも特に”食”に関しては、切っても切り離せないモノですよね。確実に将来性はありそうです!

農業会社はスタートに最適

今、日本の農業は、個人経営から組織でやる農業へと変貌しつつあります。
日本の農家数の推移は、1997年には約257万戸いましたが、2017年には半減してしまい約120万戸になりました。それに対し農業法人の数は、2005年8700社から2016年には2万800社にまで急増しています。
さらに政府は2025年までに5万社まで増やすという目標を掲げています。
そうなると、農業会社による大量の求人発生することは明白です。そんな今こそ、農業会社で経験を積むチャンスなのです。

そして著者はこうも言います。「農業会社が求めているのは”チームプレーが出来る人”」
つまり、農業経験の有無に関わらず、報連相ができて一緒にプロジェクトを進めていける人なら採用したいと考えています。
さらに言えば、サラリーマン時代に培った PC のスキルや営業のスキルや経理のスキルなど、様々な業界から色んなスキルを持った人を採用しようとしています。
なので、「自分は農業未経験だから・・・」などと遠慮する必要は全くないのです。どんどん応募しましょう。

農業会社に就職し、チームの一員としてその能力を発揮していきましょう。それと同時に農業経験も積んでいけます。

先駆的な農業会社の探し方

応募すると言っても、あまり業績が伸びていない会社では多くの事が学べないかもしれません。将来独立するための就職なのにそれでは困りますよね。そのため、本書では”多くのことが学べそうな先駆け的な会社”の探し方も紹介されていました。

多くのことが学べそうな会社のポイントは、SNSで積極的に情報を発信しているかどうかです。
そういった会社は、自分の会社をアピールし、それに賛同してくれる人を求めている傾向にあるそうです。
そして、「新規で農業に参入した会社の中から、特に成長している会社を選択すべきだ」とも言っています。

しかし、ひとつ注意しておきたいのは、そういった会社の面接で”農業を熱く語ってはいけない”ということです。なぜなら、グングン成長している農業会社の本心は「一緒に農業をやろうぜ!」ではなく「一緒にビジネスをやろうぜ!」と考えているからです。
農業をしっかりとビジネスとして捉えて、「いくら儲けるか」「どうやってシェアでナンバーワンを取るか」と考える人材を求めているのです。
そして、その中で成果を出しながら、独立に向けてノウハウを身に付けていくのが著者が勧めるやり方です。

農業をきちんとビジネスとして捉え、利益追求の為に頑張れる人こそ農業会社は求めているということなのですね。
農業に携わることを夢にするのではなく、その先にあるものをしっかり見据えて行動していきたいと思いました!

まずは出世せよ!

農業会社に入って独立を目指す1番の近道はその会社で出世する事です。
そして、ビジネスを作り上げていくプロセスを実地でしっかり学び、自分のものにしてから独立しましょう。
なので、まずはその会社で出世しましょう。

「いやいや、そんなに簡単に出世できるわけがないでしょ」と思う方もいますよね。
しかしこの本にはこうも書いてあります。

”実は、世の中のビジネスマンのレベルと農業会社のスタッフのレベルを比べた場合、まだまだ世の中のビジネスマンのほうが高いレベルにある部分が多いのが現状”

つまり、今の会社でもそこそこ仕事ができている人は、農業会社に就職したらあっという間に出世できる可能性が高いというわけです。

農業をお金に変えていくプロセスに深く関わるためにも、まずは出世しましょう。
現状は脱サラ組の人達の方がレベルが高いようなので、今こそチャンスです!

独立の前に勉強しておく9つのこと

出世をして、ボスの右腕としてバリバリ働いて会社を大きくしていくのもきっと楽しいでしょう。それはそれで成功の人生です。
しかし、ある時ふと「自分でやってみたい」と思う時が来るかもしれません。そして、そう思うようになった時が”独立のタイミング”です!

ただし、「給料をもらっている間に必ず勉強しておかなければならない9つのことがある」と著者は言います。
ここからはこの記事の本題。その9つについて説明します。

【第1条】植物の理屈を知れ

農産物の生産の仕方の前にしっておきたいのが、「植物の理屈」です。植物がいったいどんな生態原理をもっているのか、分かりやすく言えば「何のために生きているのか」を知ることが農業ビジネスには必須です。

その答えは”植物も動物と同じように子孫を残すために生きている”です。
これが当たり前のように思われますが、実は奥が深いのです。

植物も人間と同じように、小さいころは病気にかかりやすかったり、子供と同じように躾が必要であったりします。そして、植物が花を咲かせるのは、人間で言えば30代~40代の1番油が載っている時期。そこで受粉し、種をつけて枯れていく。
この植物の一生は、人間の一生とリンクしています。

”「結局のところ、みんな子孫を残すために頑張っているんだ」というところに気が付くと、農業が何たるかが理解できるようになってくる”と著者は言います。
こういった、自然の摂理をあらかじめ知っておくことで、より深く生産業としての農業が理解できるようになります。

【第2条】農業機械作業のコツを知れ

農業機械とは、トラクターやコンバインだけではありません。今の時代はパソコンやスマホもそれに含まれます。効率的に利益を生んでいくためにも、そういった機械全般の知識を学んでおきましょう。
ポイントは”機械は楽をするための道具ではなく、利益を生むための便利なツールとして捉える”ということです。

農業界にはまだまだパソコンに弱い人がたくさんいるので、そんな今こそサラリーマン時代に獲得したPCのスキルを発揮する時なのです。

【第3条】四季の変動を知れ

農業をやる以上、絶対に欠かせない知識が「二十四節気」です。
夏至、冬至、春分、秋分などは聞いたことがあるでしょう。また、「雑節」として、節分、彼岸、土用、などもそうです。
植物を育てるには、季節の変動に敏感である必要があります。そこで、1年を24節に分けた「二十四節気」を学ぶことで季節に対する理解が深まるというわけです。

【第4条】物流の仕組みを学べ

これからの農業は、「農協に出荷するだけで終わり」ではなく、エンドユーザーと直接つながることも多くなってきます。そのため物流の知識は必須になってきます。
送料などもしっかり加味して値付けをしないと赤字になってしまう可能性もありますし、お客様のもとに何日かけて到着するのかなどもよく考えて発送するなどの、配送の段取りも必要になってきます。
独立を考えているなら、今いる農業会社にいる間に物流の仕組みを学んでおきましょう。

【第5条】市場相場、モノの価格を知れ

「モノの価格とは、需要と供給のバランスによって決まる」ということは既にお分かりかとは思います。
我々がスーパーなどで目にする野菜や果物は、既に価格が決まった状態で売られていますよね。しかし大切なのは、市場相場の動きや価格交渉の中で、実際に価格が決まっていく過程を体感することです。
そのため農業会社にいるうちから、自分が取り扱う商品の価格、価値、値ごろ感を常に把握しておくことが重要です。

また、どんなことでもお金に換算するという癖をつきておきましょう。
種1粒の値段でも気にして、常に、自然とコストと利益を計算できるようになれれば、独立経営した後も成功する可能性はグンと上がります。

【第6条】コスト削減のノウハウを身に付けろ

持続的に農業ビジネスを行っていくには、常にコストを抑える努力をしていかなければなりません。

これまでの農業では、生産性が低いため、”コストカット=人件費”という構図が一般的でした。それは、もともと農業界の人件費が安く設定されていたからです。
しかし、少子高齢化で働き手が少なくなっている現代では、農業でも他産業並みの人件費を払わねば人を雇えなくなっています。また、年々最低賃金も上がっています。
そのため、コストカットを人件費だけで行おうと思っても、とうてい間に合いません。
要するに、これからはスケールメリットを得たり、生産工程を効率化したりする必要があるということなのです。

また、離職率が高いと、持続的な経営ができなくなるため、「働いてくれる人たちといかに”WinWinの関係”を気付くか」も重要なポイントになります。
そういった雇用に関することも、農業会社で働きながら学んでおいたほうがいいでしょう。

【第7条】帳票類の付け方を覚えよう

帳簿の付け方もぜひ身に付けておきたいスキルの一つです。
脱サラ組の方達であれば、すでにこのスキルは持っているという人も多いでしょう。しかし、ルーティンワークとして帳簿をつけていても何の意味もありません。
では、”帳簿をつける”ということはどういう意味を持つのでしょうか。

答えは「毎日、毎日、目標に達しているか否かを確認している」ということです。
年間の売上目標があったなら、それを12ヵ月で割り、さらにひと月の営業日で割って、1日の売上目標を算出する。その数字とその日の売上を、毎日比べ合わせることが”帳簿をつける”ということなのです。
毎日、帳簿をつけることによって、もし目標に達していない日が続いていたら、何か対策を練らなければならないことに気付けます。しかし、何も考えずに帳簿をつけていたら気付けません。
よって、農業会社にいるうちから「いくら売り上げて、いくら出ていったか」にできるだけ関わってください。もしそれが難しくても、せめて自分が関わった仕事のお金の出入りぐらいは把握しておきたいものです。

【第8条】キャッシュポイントをつかめ

「キャッシュポイント」とは簡単に言うと、”お金になるポイント”です。
そして、そのキャッシュポイントは同じ農業でも作物によってそれぞれ違います。
たとえば次の会話をご覧ください。

(本書から引用)
ほうれん草をつくっていた私「大根なんて、掘った後洗わなきゃならないでしょう。それに比べてほうれん草は洗わなくていいんだ。絶対にほうれん草のほうがいい」

大根農家「大根は洗えばいい。白菜なんて重たいぞ。あんな重たい白菜なんて、大変なだけだからやるべきじゃない」

白菜農家「大根は洗わないとならないだろう?ほうれん草は袋に詰めなくちゃならないだろう?それに比べて白菜はかかえて段ボール箱に詰めればいいだけだ。効率的な白菜がいいに決まっている。」

トマト農家「君たちのはダメに決まっている。重たいし、洗わなきゃいけないし、袋に詰めなきゃいけないし。その点、トマトは収穫したらそのまま出荷できる。軽くて運びやすくて、すぐお金になる。こんな楽なことは無いよ」”


この会話のように、みんなが「うちがいい」と主張しているこれこそがキャッシュポイントになります。
「白菜は重いから大変だ」と他の農家が思っても、白菜農家はそれを面倒と思わない、むしろ「効率的だ」と思えるからこそ白菜で儲ける事が出来るのです。そして、それが彼のキャッシュポイントだという事です。

キャッシュポイントとは、たいていは人が嫌だと思うところに眠っていることが多いです。
人と話をする際には、そういった、人が嫌だと思っていること、面倒だと思っていること、困っていることなどを聞き出し、キャッシュポイントを見つけ出してみてください。

【第9条】ネットワークを築け!

農業というより、独立に関して絶対欠かせないのが”ネットワーク”です。

当然、農業会社にいるうちにネットワークは作り上げているとは思いますが、それに劣らず大切になってくるのが新たな場所でのネットワークづくりです。
独立して農業を始めるときは、たいていどこかの地域に新参者として入ることになります。そして、その中でのネットワークも大事にしていかないと、その地域で農業を続けていけなくなります。
ただ、すでに農業会社に就職してチームワークとコミュニケーションが取れている人であれば、全然問題はないと思います。

どれも大切な事ばかりでしたね。
特に私が気になったのは、「二十四節気」についてです。季節に敏感になるためにも、さっそく学んでいこうと思いました!

所感

農業会社に勤めながら農業経験やノウハウを学んでいくことは、独立の成功率としてはかなり高そうですね。なにより、給料を貰いながら勉強していけることは大きいメリットでしょう。
また、農業界関係者との繋がりも期待できそうです。
実際に就農に向けて動き出したときに選択肢の一つとして、こういった道も考えておくといいと思います。

とはいえ、この9か条は今農業以外の企業でサラリーマンをしている方でも学べる項目もあります。コスト削減や帳票類の作成などは今の内から勉強しておきたいところです。
私もさっそく「二十四節気」についての学ぼうと思います。

まだまだ世の中のサラリーマンの方が高いレベルにある今、農業会社に挑戦してみてはいかかでしょうか?

最後まで読んでいただきありがとうございました!