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農地選びで迷わない11のポイント

新規就農者は就農前にやる事がたくさんありますよね。その中でも”農地選び”は最も重要な項目の一つであると言っても良いでしょう。
しかし、就農の経験がない人に良い農地か悪い農地かの判断が果たしてつくのでしょうか?良いと思って借りた農地が、実はあまり良くない農地で「最初の土づくりに何年もかかってしまった」なんて事になったら目も当てられません。
そうならないようにあらかじめ下調べをしておきたい。けど、何もかも初めてでどこに気を付ければよいのかわからない。

ご安心ください。今回は【就農は「経営計画」で9割決まる 農業に転職!(有坪民雄 著)】から農地の選定についてご紹介します!

この本は基本的には営農計画に重きをおいた本で、営農計画を作成するときなどに重宝しますが、その他にも農地の選定や、作物別の特徴・経営モデル、新規就農者がしっておきべき事、よくあるQ&Aなど、新規就農に役に立つ情報が目白押しです。
1冊は手元に置いておきたいオススメの本となってます。

その中から、今回は農地の選び方について抜粋しました!
私と同じく就農経験がなく、「農地の選び方なんて分からない」という人は、一緒に勉強していきましょう!

本の概要

本のタイトルにもあるように、基本的には経営計画の作り方を主眼とした本ですが、新規就農者に向けた本であることに変わりはなく、新規就農者向けの知りたい情報もたくさん載っています。
章ごとの目次は以下の通り。

  • 第1章:新規就農に「経営計画」が必須である理由
  • (就農者インタビュー)ぼくらはこうやって農家になった
  • 第2章:経営計画書を作ってみよう!
  • 第3章:新規就農者が知っておくべき9のこと
  • 第4章:経営計画ができたら次にするべき12のこと
  • 第5章:移住希望者必読!農村社会で生きるための必須知識
  • 第6章:よくある質問「Q&A集」
  • 第7章:20年後の農業の姿

特に第6章のQ&A集では、新規就農者が抱える素朴な疑問にお答えしているので、参考になるところも多いのではないでしょうか。
今回は第4章から”農地の選定”という項目を抜粋してご紹介します。

農地の選定―――11の評価法とは?

基本的に、借りられる農地というのは近くに借り手がおらず余っている農地です。
なぜ農地が余ってくるのかというと、たとえば離農する人がいたり、規模を縮小したりする人がいるためです。通常そのようなことになれば、近くの信頼できる農家に借りてもらい規模拡大を図ってもらうのですが、規模拡大も限度があるのでいつかは断られてしまいます。今まで追加で農地を借りてくれていた農家だったが、これ以上の規模拡大は難しいと判断して結果的に余ってしまうというケースです。
そういった理由で余っている農地を、貸す側が離農したタイミングで借りることができれば一番いいですが、やはりそう上手くはいきません。よって、余っている農地というのはメンテナンスもほどほどに、それなりの期間は放置されていると思っておいた方がいいでしょう。そのため、そういった農地は実地を見ておかないといけません。

次に農地の選定に関するポイントを11項目あげるので、それを評価の参考にして、希望の農地を見つけてみてください。

①土地区分

まずは土地区分です。
地方で農地を借りる場合はあまり関係ないかもしれませんが、もしあなたが都市圏での就農を希望しているなら、重要な問題になります。

三大都市圏の指定された地域には、”市街化区域内農地”というものがあり、この農地はいつでも宅地に変えることができます。そのため、この農地を買おうと思うと宅地並みの値段になってしまいますし、借りる場合も所有者がいつ「宅地にすることにしたからもうここで農業はできないよ」と言ってくるか分かりません。
以上のことを踏まえると、「都市圏で農業なんてできないじゃないか!」とお思いになられるかもしれませんが、実はそれを回避するポイントもあります。
それは、”生産緑地”の指定を受けているかどうかです。
市街化区域内農地であっても、生産緑地の指定を受けてさえいれば、簡単に宅地への転用はできません。

”生産緑地”を簡単に説明すると、所有している農地を30年間、宅地などへの転用をせずに営農する代わりに、毎年の固定資産税を数十分の一まで抑える制度です。
なので、生産緑地の指定を受けている農地は30年間は土地の転用ができず、営農をするしかないわけです。
なぜこんな制度があるのでしょうか。
もともと地価の高い都市圏の農地は、宅地並みの固定資産税を課せられると営農していけないので、営農の実績さえあれば固定資産税がとても安くなっていました。しかしバブルなどで地価が上がり続ける状態になると、「いつか高くなってから売ってやろう」と考える人が出てきて、やる気のない家庭菜園程度の営農実績をあげ、安い固定資産税を維持しながら値上がりを待っていました。それを見た国が、純粋に農業をするつもりがない人からは宅地並みの税金をとってやろうと、農地にも宅地並みの税金が課せられるようになってしまったのです。そこで、純粋に農業をしたい人たちの受け皿として”生産緑地の指定”という制度が出来ました。
安い固定資産税を目当てに指定を受けると、30年間は営農をしなければならず農地以外に転用もできないので、値上がり待ちの転売ヤーは一掃され、純粋に農業をしたい人だけが指定を受けることになりました。
そのような背景があり、生産緑地の指定を受けた農地なら価格も安く安心して農業ができるというわけです。

市街化区域内農地以外では、”市街化調整区域”や”農業振興地域”と呼ばれている地区もあります。どちらの農地も農業目的以外の転用は基本的に認められないので、安心して農業ができます。もしどちらか選べる場合は、農業振興地域にしておくと吉でしょう。それは、農政の趨勢を見るに、農業振興地域の方が国が経営資源を投入する可能性が高いからです。

都市の農地は、様々な種類があり規制を受けているんですね。
もし都市圏で農業を志している方がいれば、こういったところにも注意してみてください。
”生産緑地の指定を受けている”か”農業振興地域”がベストです!

②面積

市町村によって農家と認められる農地面積には違いがあります。
「私は自分一人が食べていける程度の農地で十分だ。だから面積は小さくてもいい」と思って農業を始める人もいると思いますが、その市町村の最低面積以上の農地を確保しないことには農家とは認められません。
就農する前にその地域での、農家として認められる農地面積の確認しておきましょう。
一般には最低50アール以上のところが多いですが、北海道などでは最低2ヘクタール以上必要だったりします。

市町村によって、農家として認められる面積は違います。
自分が就農しようとしている市町村ではどのくらいの面積が必要なのかをあらかじめ調べておきましょう!

③立地

マクロな気候風土と、ミクロの立地環境の両方を見る必要があります。
降雪量や降雨量、霧の発生度合や平均気温など、自分が作ろうと思っている作物とよく照らし合わせて判断しましょう。
なるべくなら、農地を借りる前に年間を通して四季を下見しておくといいでしょう。
また、風が強い地域や台風がよく通る地域ではビニールハウスが壊れやすいので注意しましょう。

立地は、自分が作りたい作物と密接に関係してきますので、重要度はかなり高そうですね。
最初の農地決めでは収入も無いので、春夏秋冬それぞれの時期に農地を見るのは難しいかもしれませんが、追加で農地を借りようと検討する場合などは、焦る必要も無いのでじっくり吟味しましょう。

④集約度

農地はまとまっていればまとまっているほど有利になります。少しの距離だからといって農地を何か所にも分けて借りてしまうと、後々面倒になり後悔するかもしれません。
就農当初はやる気や楽しさも相まって、遠い畑でも気にせずに作物の様子を見に行けるものですが、それが何年何十年と続くとだんだん億劫になってサボりがちになってきます。そして、そういう時に限って悪いことが起こるのです。
最初からまとまった農地を確保できることは稀ですが、営農を続けながら徐々に農地を近場にまとめていく努力をしていくとよいでしょう。
移動距離を甘く見てはいけません

別の本にも書いてありましたが、少なくとも2か所までにした方がいいようです。農地が3か所ともなると、面倒くさくなるのもありますが、農地を回る順番、農具や農機を使う順番や片づける順番、次の移動で何を積んで何を降ろすかなどを毎回毎回忙しい中で考えなくてはならず、順番をミスったりするとだんだんごちゃごちゃになってわけがわからなくなるそうです。

⑤水利

水は、水利組合(個人の場合もある)の許可がないと川の水でも使ってはいけません。水道水と同じように農業用水も買うもので経費の一端なのです。
よって、コスト削減のために、始めから水の価格が安い地域に就農することが好ましいということになります。
また、水耕栽培を予定している場合は水質にも注意してください。水質により、病気の広まる速さに雲泥の差が出ます。
農業にかかすことのできない”水”だからこそ、慎重に選んでください。

恥ずかしながら、農業を志すまで川の水は使い放題だと思ってましたw
地域によって値段が違うみたいなので、自分の作る予定の作物にどれくらいの水が必要なのかをあらかじめ算出しておくと、コストが計算しやすくなりますね!

⑥土質

借りた農地が全て一面同じ土質とは限りません。同じ畑の中でも、北側はよく育つが南側は育たないなどのムラがあることが普通です。
事前に、それまで農地を使ってきた人に畑にどんな特徴やクセがあるのかを聞いておきましょう
特に排水に関してはよく聞いておいてください。排水が悪くぬかるみが出来やすいと、機械が沈み込んで動かなくなってしまう事もあります。
また、他の農家との差別化を図るために「この地域ではあまり採れないものを作りたい」というような場合は土質に注意が必要です。
砂質、粘土質、沖積土、火山灰土など土の種類を先に調べ、作る作物との相性をチェックしておきましょう。
その地域でよく採れる作物を選んでいたり、作物から地域を選んだのであれば、その地域の土質が適しているはずなので基本的には問題ありません。

排水が悪い場合は、「ある程度の期間、晴天が続かないとトラクターを入れない!」などの自分ルールを作っておいたほうが良さそうです。

⑦通路幅

昔の農業機械は今ほど大きくなかったので、農地までの通路幅が狭いところもあります。
今ではコンバインなどの大型の農業機械を運ぶ際に4トントラックを使ったりしますので、十分な通路幅がある農地を選びましょう。

「大きな家具を買ったけど、玄関や部屋のドアを通れなかった」と一緒ですね。
意外と忘れがちな要素なので、ここでしっかりと覚えておきましょう!

⑧進入路の傾斜

傾斜がきつすぎると農業機械が地面に接触して進入できません。今では、そこまで傾斜がきついところはあまり無いかとは思いますが、念のため頭に入れておきましょう。
どうしても傾斜がきつすぎて畑に進入できない場合でも、作付面積は減ってしまいますが、スロープなどを作ることによって解決できます。
ただ農機の方もこうした農地を想定して、きつい傾斜を上り下りできるように設計はされています。しかし過信はせずに、慎重な出し入れを心がけてください

あまり意識していませんでしたが、確かに農地に入るときは必ず多少の傾斜になりますよね。
あまりに急な傾斜であれば気にした方がいいポイントですね!

⑨周囲の雇用環境

将来的に規模を拡大したり、初めから大きな規模で農業を始める場合はアルバイトが必要になることでしょう。
その際に注意することは、借りる農地の周りにアルバイトをしてくれるような人がいるかどうかです。人口が少ない集落や民家もない場所に農地を借りた場合はアルバイトを数人雇うのにも苦労すると思います。そうなると近隣の農家さんに頼みたくなりますが、農業は気候風土に制約を受けるため、自分が忙しい時期は周りの農家も忙しいことが多いです。
将来的に人を雇う経営方法を考えている場合は、この辺りも判断材料としてもっておきましょう。

企業が大型の工場を建設する時も、働く人を確保するために、あるていど人が密集しているところからさほど遠くない所に建てるそうです。
あまりに田舎すぎると雇える人の絶対数が少なくなるので、将来的に大規模でやろうと考えている方は、このあたりも視野に入れて農地を探した方が良さそうです!

⑩現役地が放棄地か

離農する人とタッチ交代で現役の畑を手に入れられるのが一番良いのですが、なかなかそうもいかないこともあるでしょう。
もし、メンテナンスされていない雑草が生え放題の放棄地を取得する時は、1年間は捨てるつもりでいた方がいいでしょう。頑張って雑草を引っこ抜いてキレイにしてみても、雑草の種はたくさん落ちてしまっているのでみるみるうちに生えてきます。こうした放棄地は除草剤を使ってもなかなか草を抑えられないことが多いです。
その場合は一度水田にして稲を育てるか、何も育てなくても常時水を張ったままにすることで、雑草の生育環境を激変させて減らしていく方法などがあります。

本当に農地が見つからず条件の悪い農地しかない場合は、こういった方法でひとまず凌ぐこともアリかもしれません。
しかし、1年も捨てるのはもったいないので、出来ればよい農地を見つけたいものです。

⑪周囲の農家の年齢

借りた農地の近くに若くてやり手の先輩農家がいると、将来規模拡大がしにくいかもしれません。というのも、辞めていく農家は近くのやる気がある農家に農地を貸すので、「数年前に新規就農してきた農家」と「長年近所で一緒にやってきたやる気のある若者」がいれば確実に若者の方に軍配があがるでしょう。
もちろん、その若者農家も規模拡大には限界があるはずなので、絶対に規模拡大ができないということはありません。当然、周りとのコミュニケーションもしっかりとれてて信頼されていれば自分にお声がかかることもあると思います。一応そういったリスクもあるということを頭の片隅においておきましょう。
もし、その若者先輩農家から離れる判断をしたとしても、せいぜい数百メートル離れれば事足る事が多いです。
逆に周りの農家が高齢な人ばかりなら、何年かすれば自分に農地を任せてくれる可能性が高いのであえて近くに住んでもいいかもしれません。

近くにヤル気のある農家さんがいるのは、困った時にも助けてくれそうで心強いですが、こんなデメリットもあるのですね。
とはいえ、農業は人とのつながりがとても重要です。離れたところに農地を借りても、交流は持っておきたいですね!

所感

まだ就農したことがない私にとってはとても貴重な情報でした。皆さんはどうだったでしょうか?
土質や水質などは専門的な知識も必要になるため、先に勉強して理解を深めておきたいですね!また、集約度も重要です。畑が広くて1か所なら耕運機を使った作業などで生産性も上がるし、メインの畑にしかない設備があった場合に移動をしなくて済みます。
水利に関しても、この本を読むまではノーマークだったため、新たな発見ができて良かったです。

今回紹介した”農地の選定”は本書の中のたった1部分に過ぎません。他にも就農をする上で大切な事がたくさん書かれているので、ぜひお手に取って読んでみることをオススメします。