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就農活動、挫折する前にこれを読め!

非農家出身の方が脱サラして就農を目指すとなると、高いハードルをいくつも越えなければならず、挫折しそうになることはよくあると思います。
家族からの反対や、就農相談窓口でのダメ出し、中々見つからない農地、毎日通うには遠すぎる研修先など。
就農への道は長く複雑なので、時には「やっぱり他の道でも探そうかな・・・」なんて諦めかけてしまう事、ありませんか?


今回は、そんな挫折しそうなあなたにこそ読んでいただきたい本、【農で起業する!脱サラ農業のススメ(杉山経昌 著)を紹介したいと思います!

自分で作った野菜や果物の美味しさ、ストレスの無い生活、田舎での自由な暮らし、そんな、農業の楽しさと素晴らしさが余すことなく書き綴られていて、読んでいるとウキウキワクワクしてきます!
今、就農活動がうまくいかず、就農を諦めかけている、悩んで落ち込んでいるという人はこの本を読んで初心を思い出してみましょう。自分がなぜ農業をやろうと思ったのかを、なぜ農業に憧れを持ったのかを。

就農活動中、壁にぶち当たる事は何回もあるでしょう。
その度にこの本を読むとヤル気が充電されますよ!

本の概要

この本は、脱サラ農家の著者がサラリーマン時代の経験やスキルを駆使して、夫婦2人で年3000時間、週休4日を達成できたノウハウや失敗談が書かれた本です。
著者曰く「サラリーマンをやっていた人なら農業は面白い!」。

第1章ではサラリーマン時代に培ったビジネス的センスを農業に生かせるようにするノウハウの紹介。第2章は失敗を積み重ね試行錯誤した農業経営のお話。第3章は、著者の田舎でのライフスタイルが公開されています。

今回は、著者がなぜ農業をやろうと思ったのか、そして就農し、週休4日を達成するまでの経緯などについて書かれたプロローグの部分から抜粋してまとめました!
農業の良いところがたくさん書かれていて、すぐにでも農業を始めたくなる!そんな内容です。
それに、1人称視点の自伝的構成になっているので、読みやすく面白いです。

実際の本は、全章ストーリー仕立てになっているので、普段あまり本を読まない方でも小説みたいにスイスイ読めてとてもオススメですよ!

では参りましょう!

脱サラ農業のススメ

農業は「きつい」と言われますが、実はそこまででもありません。50年前ならいざしらず、今では機械化が進んでおり力仕事はほとんどありません。
さらに言えば、精神的なストレスも少ないです。”百姓は現在の日本では1番ストレスの少ない職業。百姓で胃に穴をあけて死んだという話など聞いたこともない。”と著者の杉山さんも言います。
そんな杉山さんは、現在では働きたいときに働き、休みたいときに休むという本当に自由な生活をしています。夏は仕事を中断して近くの川で泳いだり、昼の暑い時には家で昼寝をしたり、雨の日は読書や録りためたビデオを見ています。
農業が忙しい時でも、丹精した作物を収穫するのはとても喜ばしく幸せなことです。
杉山さんは今現在、夫婦2人で百姓をしていますが、こんなにも楽しく農業ができるのは”自分たちの時間の使い方、働き方全てを自分たちで決めているから”と語ります。

ストレスで胃に穴があく前に転職を考える

実は杉山さんは農家の出身ではありません。農家の”の”の字も知らない完全な非農家出身者でした。
そんなわけで農家になる前は外資系の起業でサラリーマンをしていましたが、それはそれは過酷な状況だったそうです。
外資系ゆえに、一度悪い結果を出せばすぐ降格されるような会社で、「私が辞めるころには私の給料の80%はどれだけのストレスに耐えているかで支払わられていた。」と語っています。
もはやいつ身体を壊してもおかしくはない状態で、”死ぬ前に自分の人生を自分のものに取り返そう”と決心し、転職に踏み切ったそうです。

農業を選んだわけ

転職するとは決めましたが、杉山さんはなぜ農業を選んだのでしょうか?
それは営業職に就いていた杉山さんならではの考えがあったからです。

売り上げを上げるにはどうすればよいと思いますか?
簡単に言うと、競争相手を蹴落とすか、新しい需要を発掘するかの二択になります。そして、一般的には価格競争回避などのために、新しい需要を発掘する方が好ましいと言われています。
しかしここで杉山さんは気付きました。この”新しい需要を発掘する”というのは、すでに満足している人に満足は勘違いだと思わせる仕事なのだと。
半年前に買った製品を満足して使っている人に、「それはもう時代遅れだ。」と言って新しいモデルを出して買わせる。すると当然、以前まで使っていたものはゴミ箱行きになる。そしてまた半年後に新しいモデルを出して買わせて、まだ使えるものをゴミ箱行きにする。
「自分が頑張れば頑張るほど日本中にごみ屑が増えていく、それも胃に穴があきそうなしんどい仕事をして、その結果が地球を破壊しているのか」と感じ、地球を壊さない仕事をしようと思ったのです。
そして、それが農業でした。

田舎は家も土地もタダ?

こうして杉山さんは会社を辞めました。
非農家出身者は農地を持っていないということもあり、本来ならばここからが大変なのですが、杉山さんは持ち前の行動力であっという間に就農までの道を進んでいます。

百姓になるべく色々調べていると、ある日テレビで宮崎県の話が出てきました。
人口が少なく税収がほとんどない寒川という地区のある道路が、台風が来るたびに崩れ毎回何億円も修理代がかかるそうです。それを嫌った市が、寒川の人を別の地区へ移住させるために住民全員に新築の家をプレゼントしました。
当時はバブルが弾ける前で、都市部では土地は大変貴重だという認識があったため、杉山さんは「あそこへ行けば土地も家も農機具も畑も全部タダ同然だ」と思い、すぐに東京にある宮崎県の出張所に電話をかけたそうです。
「すみません、私百姓になりたいんです。農地と農機具と住まいを居抜きで売ってくれるところを紹介してくれませんか。」と。
2,3日待つと宮崎県庁まで来てほしいとの電話がありました。

何かを我慢で1000万

農地を売ってくれる人を紹介してもらおうと宮崎県庁まで行ったは良いのですが、実は杉山さん、この時はまだ何を作るか決めていませんでした。
そこでまずは県庁の課長に、百姓の先生を紹介して貰います。そして、その百姓の先生の「何かを我慢するだけで1000万」という言葉で杉山さんは「妻子を路頭に迷わさない自信がついた」と肩の荷を降ろしたそうです。
こんな言葉です。

”「あなたはまだ何を作るか決めてないみたいだけれど、心配しなくてもいいよ。三反歩のハウスがあれば何を作っても1000万になる」
「もしあなたがトマトみたいな作物を選べば、その日のうちに色が付き始めたら、何が何でも収穫して選果して箱詰めして市場に持っていく。これを毎日続けなければならない。眠い眠いを我慢して1000万」
「イチゴを選べば11月くらいから4月くらいまで毎日腰をかがめて収穫、収穫、収穫、これまた選果して箱詰めして出荷。毎日腰が痛い、腰が痛いを我慢して1000万」
「キュウリみたいなのを選べば4日おきに農薬散布。農薬怖い、農薬怖いを我慢して1000万」
「何を我慢する?」”

はじめは失敗の連続、これが大切

最終的に杉山さん達が買ったのは、ブドウ園が3反4畝のハウスと金柑畑が2反歩で耕作農地は60アールでした。
なんと農業研修を1日もせずに就農したそうで、始めは失敗の連続。
非効率な作業順序、間違った方法での作業、そもそもやる必要のないことまでしていたため、最初はただただ時間ばかりが過ぎていきました。
どうすれば上手く仕事が回せるのか。農協の技術者にも「コンサルタントを紹介してほしい」などと相談しましたが相手にしてもらえず、結局夫婦2人で試行錯誤していき、そこそこ上手く回せるようになったのは2年後だったみたいです。
しかし、その2年間がとても大切なものでした。
「もしそのときコンサルタントを雇っていたら、間違いを犯したとき起こる結果を目の当たりにする貴重な学習機会を永久に失って百姓で成功できなかったと思われる」と杉山さんは語っています。

賃料は労働で返して一石多鳥

さて、農地は買いましたが農機具はどうしたのでしょうか?
トラックはもともと持っていたハイエースを代わりに使い、トラクターやその他の農機具類は友達に借りたそうです。
しかし、農地を買うのにお金のほとんどを使ってしまっていたため、レンタル代を払えません。仕方がないので労働で返します。
しかし、なかなかどうしてこの”労働で返す”というのはとてもお得なのではないかということに杉山さんは気が付きました。
お金が払えないから労働で返す。労働で返すと、授業料タダで農業研修ができることになる。その上、レンタル代を払えているのだからタダ以上のことです。
例えば、今度スイートコーンを作りたいと思えばスイートコーンをやっているときにお手伝いに行き、全部習う。そうやってお金はなくてもやっていくことができました。

杉山さんが言う”これだけは無きゃいけなかったお金”というのは、「1年分の生活費と農機具の購入費用250万円だけ」だったそうです。

予測と結果がずれる原因を知ることが重要

杉山さんは農業を始める前に、役場からもらった農産物の各種データを基にしてシミュレーションをしていました。
そのシミュレーションから夫婦2人で年3500時間働けば十分なことや、純資本回収率が8%もあることなど、様々な数字をはじきだし計画を立てていました。
しかしどんなことでも、実際にやってみるとシミュレーション通りにはいかないものです。
最初は予想していた数字とはほど遠い、夫婦2人で6500時間働くことになってしまったそうです。
なぜここまで数字が違ってきてしまったのか。それは、ぶどうの畝の雑草が、自分たちが取るペースより早く生えてきてしまい、冬場まで永遠に雑草取りが終わらなかったからだそうです。
また、役場からもらったデータに、雑草取りにかかる時間のデータが無かったのも理由の一つです。
ただここで大事なのは、あらかじめシミュレーションをしていたことで予測と実際とがどう違ったのかが分かることです。
もしシミュレーションをしていなければ、「もともと年6500時間かかる作業なのかな」と思ってしまい、その後ずーっと年3500時間労働を目標に仕事をすることはないでしょう。シミュレーションしていたからこそ、労働生産性を飛躍的に上げなければならないんだなという事に気がつけるのです。

例えば杉山さんは、労働生産性を上げるのに1番単純で効果的な方法として「仕事を半分やめろ」と言っています。
だいたいの昔からいる農家はどんぶり勘定が多く、ちゃんと計算すると赤字で育てているものが結構あるといいます。
実際に杉山さんも、最初の年はどんぶり勘定で金柑を作り15万円の農薬代だの肥料代だのをつぎ込んで儲かっているつもりでしたが、実際に収支を計算すると8万円の赤字だったそうです。つまり、これをやめるだけで8万円儲かるわけです。
仕事を半分やめると利益が倍、つまり1時間当たりの収益性が4倍になるわけです。

収益性を上げるテクニック

当時の宮崎県では見積もりを取るという習慣がありませんでした。いえ、もしかしたら今でも全国の田舎ではまだまだ見積もりを取らない所も多いかもしれません。
しかし、それではダメです。”相見積もり”を取りましょう。相見積もりを取ることで、どこが一番安いのかが一目瞭然になります。そして、その安いところから買うのです。
これは決して悪いことではありません。むしろ良いことです。
企業活動では、相見積もりを取らずに発注することは、特定の相手に利益を与えようとする背信行為となります。そのため相見積もりをとって、安いところに発注しましょう。
例えば、杉山さんは肥料を買うために片っ端から電話を掛け交渉をしたところ、なんと一番高いところと一番安いところでは、倍以上の値段の違いになったそうです。
これは、杉山さんの元営業マンのスキルのたまものでもありますが、見積もりを取る習慣のない地域だったからこそ、ここまでの大きなギャップになったものかと思われます。
結果、1年間に使う8種類の肥料を朝1時間、電話をかけてどこから買うか決めただけで、高いところから買うと45万円かかるはずの肥料代が25万円で済みました。電話代だけで20万円も浮かすことに成功。そして、これが労働収益性を上げるという事です。
しかし、これだけではまだまだ年間3500時間労働には到底たりません。
さらに収益性を向上させるために杉山さんがチャレンジしたのは観光農園でした。

予行演習をして手ごたえを感じた

まず最初の年は、ほとんどのぶどうを農協に出してしまったため、残りのぶどうで3日間だけ試しにぶどう狩りをやってみたそうです。
初日こそ1人もお客さんは来なかったものの、次の日からは畑の前の道端にビーチパラソルを立て、ぶどうの箱入りとパック入りと試食用をおいて待つことにしました。
すると、畑の中を通る車が「なにをしているんだろう」と停まってこっちを見るそうです。そこですかさず、ぶどうの箱とパックと試食用をもって営業をかけに行きます。
宮崎の人はいい人達ばかりで、試食用を食べてしまうと断り切れないのか、「今は忙しくてぶどう狩りはできないから、そのぶどうの箱をもらおうか」となってくれるのです。
3日目には、「これはどうしようもないな」というぶどうをジュースにし、凍らせてシャーベットとして売ったところ、2日目と3日目で5万づつ、計10万。売れ残りのぶどうで10万円の売上になりました。
心の中で「これはもうやめられない!」と感じたそうです。

研修は自分で計画を立て、必ず研修報告書を書く

杉山さんの園では、毎年完売して閉園した後は、夫婦2人で1週間旅行に行きます。
そして、旅行中にあちこちで研修も兼ねたぶどう狩り、リンゴ狩り、梨狩りなどをして喰いまくります。当然これは全部農業経費です。
その時に美味しいところがあれば園主をつかまえて、どういったやり方で育てているのかを聞き出します。通常、同県内の近いところでこれをやると競争相手だと思われて教えてくれませんが、他の県だとみな自慢して教えてくれるそうです。こういった交渉の上手さも、杉山さんが営業マンだった頃のスキルが活かされているのでしょう。
他にも、お客様へのサービスの仕方や口頭での対応の仕方。袋の詰め方など、よその観光果樹園よいところを全部採用するわけです。

ここではお客様はみな友達、ありがとう!

杉山さんの農場経営のポイントは「規模が小さくて、効率がよくて、悠々自適で週休4日」です。そういった戦略だから、お客さんを増やしたくないとのこと。
そのため、顧客リストを毎年更新しています。
具体的には、農園の来場回数や売上貢献度などを多い順に並べて、大胆にも下から300件を消してしまうのです。そして新たに300人を登録する。
これを10年間やっていると残るのは熱心なリピーターばかりになり、集客のための宣伝広告費は使わなくてもやっていけるようになります。
また、データを消してしまうことでそのお客さんには毎年届いていたハガキが届かなくなり、忘れられてしまったと思い慌てて顔を出すファンもいるとのこと。
そういう時には「すいません。家のコンピューターが間違えました。なんでなくなっちゃたんでしょうかね」と言って、順位の上の方にもう一度追加するそうです。
こういう関係になってくるとやっている側も嬉しくなってきます。
杉山さんもこう言っています。
”要するにお客さんがたんに売った買ったの関係だと思っていないということです。あなたとお友達だ。夏や正月にお友達からハガキがくる。そういうのを心待ちにしている。たまたま忙しくて2年間行けなかったけれども、「あそこからハガキが来ている」というのが嬉しくもあったわけだ。”

このようにして杉山さんは週休4日を達成しました。
今では毎日が幸せだそうです。そして、最後にこうも言っています。
”みなさん、転職の時はお百姓さんになることをお勧めします。それが出来るという事が本当に幸せです。”

所感

「地球に優しくありたい」という著者が選んだのは農業でした。
1990年の就農ということで、今とは時代背景が違いますが、タメになることも多かったのではないでしょうか。
働き方を自分で決められるからストレスも少なく済み、オフシーズンは農業研修として毎年旅行に行く。自分で育てた作物を収穫する時の喜びややりがいは、仕事を続けていくモチベーションにつながり、お客さんとも良好な関係を築けている。
いいですね。私もこんな生き方がしたいし、するつもりで頑張っています。

今回はこの本のプロローグ(その中でも1部)しか紹介できませんでしたが、第3章の著者のライフスタイルなども読んでみると、ますます就農へのやる気がみなぎりますよ!
もちろん、第1章、第2章の内容も面白く脱サラならではのノウハウが書かれていてオススメです。

今、悩んで就農を諦めかけている方、もう一度こんな理想の生活を思い描き前に進んでみませんか?