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農業関連

新規就農者が絶対に読んでおくべき1冊

このブログを読んでいただいてる方たちは、「脱サラから就農を目指して情報を集めている」という方が多いと思います。
ここでも色々な本を紹介してきたので、就農する為の大ざっぱな流れや手順は分かったのではないでしょうか。「農地を探す」だったり「営農計画を作る」だったり、他にも「研修を受ける」とか「お金を貯める」とか。
しかし、「やる事は分かったけど実際にはどういった感じなのか。」、「もう少し掘り下げて説明してほしい。」、「もっと細かいところまでリアルに知りたい!」と思いますよね。・・・安心してください。

今回は、皆さんと同じく脱サラから就農を目指し、その過程がこと細かに書かれている本【非農家出身者のための 脱サラ就農の真実(ぴよぴよ百姓 著)を紹介します。

このブログで数々の就農本を紹介してきましたが、この本が断トツです。
新規就農を目指し始めた方が知りたいことの、ちょうどど真ん中を突いてきています。経営などの就農してからのことではなく、まさに脱サラから就農するまでの経緯が凝縮されていて、本当にめちゃくちゃタメになります。
特に見どころなのは”実際に行動してみてぶち当たった、就農本には書いていない事”を包み隠さず書いてくれているところです。この著者も就農する前に、たくさん就農本を読んだのですが、実際に行動に移してみると、今まで読んできた就農本には書いていないような事がたくさん起こり、とても困惑したそうです。
そんな貴重な体験をそのまま本に載せてくれています。
新規就農を目指しているなら、絶対に読むべきです。必読です。

紙媒体が好きな方には残念ですが、Kindle版(電子書籍)しか出ていません。が、その分激安です。この安さでこの濃い内容は破格です。コスパ良すぎです。私もこの本の為だけにKindleのアプリをダウンロードして、未だにこの本しか入れてません。それだけ良い本なので是非読んでみてください。

ちょっといつもと比べアツくなりすぎましたかねwでも本当に、こんな良書なかなか無いです!
紙の本が好きな私としては、この本が紙で出版されることになったら内容同じでも買いますw

本の概要

この本は前述したように、脱サラしてから就農するまでの経過、そして就農を開始してからの準備や考える事がかなり細かく網羅されています。
前11章ありますが、ページ数は89ページと少ないので読みやすいです。その分中身が濃い・・・!

章ごとの目次は以下の通りです。

  • 第1章:はじめに
  • 第2章:新規就農に関わる書籍の著者
  • 第3章:就農までの流れ
  • 第4章:お金の準備
  • 第5章:農業研修
  • 第6章:都道府県の就農認定
  • 第7章:農地
  • 第8章:住宅(住まい)
  • 第9章:耕作を始める前の準備
  • 第10章:出荷先
  • 第11章:おわりに

第3章から第8章までが、脱サラから就農まで。必要なお金、研修、農地などのことについて書かれています。
第9章からは、就農後の準備。肥料の事や出荷先などのことについて書かれています。

89ページと少なく、紹介しすぎるとかえって著者の利益を害してしまうかもしれない為、今回は私が個人的に気になった点を私の言葉で紹介していきます。

自分と同じ境遇の著者の就農本を見よ

この本の第2章で言及しているのですが、自分と同じ境遇あるいは条件の著者の就農本を読まないと、就農する上で感覚のズレが生じてきてしまいます。
例えば、非農家出身で脱サラを目指している人が、農家出身で脱サラをした人の就農本を読んでも、本当に知りたいことが書かれていません。というのも、もともと農家出身の人は農地探しや販売ルート構築、地域との関係作りや農業関係者とのコネクション作りなどの、非農家出身者特有の苦労をしていないことが多く、本には書かれていない、もしくは、書いてあっても重要な点が抜けていたり、内容が薄くなりがちです。
もちろんそういった本も、それ以外の部分では役に立つことも多く、素晴らしい本なのですが、実際に自分の足で走り回って農地を探した時の経験談や、知らない土地に入ってその土地の人とどういう風に付き合いはじめていったのかなどの”非農家出身者が知りたい本当のリアル”を、経験していないから書いておらず、非農家出身者としては物足りない内容になってしまいます。
それとは逆に、農家出身の方が非農家出身者の就農本を買っても(農家出身の方が就農本を買う事は少ないとは思いますが)、農地には困っていないのに、農地の取得の話を延々と聞かされることになり、これもまた満足いく情報ではなくなってしまいます。
また、自らは農業経営に従事しておらず、別の人の体験談を参考にして、フリーライターや農業技術指導員が本を書いている場合もあるそうです。

ただし、これは就農本に限ったことで、就農した後は出身がどうであれ同じ土俵に立っているので、その後の農業経営本なんかは自由に好きな著者の本を選べばいいと思います。
なので、就農本に関してだけは、なるべく自分と同じ境遇の著者が書いた本を意識して選んでいくべきです。

ちなみにこの本の著者(ぴよぴよ百姓さん)も非農家出身脱サラ組です。

信用できる農業委員会かを見極めよ

これは農地探しの際に、著者が運悪く、あまり協力的でない農業委員会にあたってしまったときの話です。

著者は最初に、自宅と同じ県内のA県□市で農地が見つかり、地主さんと面談を行って、お借りすることができるようになりました。農地賃借に当たっての条件についても「特段の条件は無い」との事だったので、正式な賃借は農業委員会での承認後でしたが、地主さんの内諾を得て耕作を始める事にしました。
ここまで聞くと、地主さんの理解もあり順調そうですが、問題はここからです。
農業委員会での承認に当たり、「□市の住民になるように」との指示があったため家族を残したまま自分だけアパートを借り、先に□市に移りました。
しかし、転居を済ませても一向に提出すべき書類が送られてきません。何度も何度も催促をし、ようやく書類が送られてきたと思ったら、そこには見慣れない承諾書が。農地賃借の条件は再三確認し、「特段の条件はない」と回答を得られていたのにも関わらず、そこには9項にも及ぶ賃借条件が記載されていました。
そして、その中のいくつかの項が、著者の運営方針として到底承諾できるものではありませんでした。
その後、何度か話し合いをしましたが、結局承諾書なしでの賃借は不可能ということになり、お借りするはずだった農地は一旦すべてお返しすることに。既にいくつかの作物を播種・定植していたので、全て抜き取りました。さらに、せっかく引っ越したアパートを1か月も経たないうちに解約することになり、アパート関連費用や、種苗代などで20万円も損失してしまったのです。

このように、怠慢な農業委員会も存在しているようです。何回か担当者とお話しして、なんかちょっとおかしいなと思ったら、同時進行で別の市の農業委員会などにも声をかけておいた方が良いでしょう。
ちなみに、著者が承諾できなかった項目とは、「後継者がいないといけない」、「3年間は農地を追加取得してはいけない」、「5年以降に4反以上の土地がないと、農家住宅を建ててはいけない」の3つです。

後継者の有無が、農地の賃借に関係してくるのはおかしな制約ですね。子供がいないと農地が借りられないってのは、かなり差別的な印象です・・・。ほかの市でもこんな条件あるんですかね。

著者が学校で研修を受けたワケ

学校に通わずに農家研修だけで農業技術を身に付けて就農している人も沢山います。なので、学校に通うか通わないかについては正解はありません。
そんな中で、著者は学校で研修を受けることにしたのですが、そのキッカケを読んで、私も学校に通うことを考えるようになったので、少し紹介します。

・著者が農家研修をしている時の出来事
”そこのご主人は農地にたくさんの堆肥を撒きます。毎年毎年、反当り2トン以上撒いています。あるとき「どのくらいの見当で撒いているのですか?これにより窒素・燐酸・カリウムはどのくらい入りますか?」と聞いてました。ご主人の答えは「あるだけ撒くんだよ。肥料成分なんてわからない。」でした。肥料成分を計算していないのです。でも、だから問題だというわけではなく、そこの農地でも野菜は立派に育つわけです。それはおそらく、ご主人の長い経験から、肥料成分なんて計算しなくても、だいたい結果が分かるのです。”(本書より引用)

そういった経験から、農家研修では基礎知識が学べないことを認識し学校での研修をすることにしたそうです。

私も性格上、何かを学ぶときは基礎から体系的に学びたい方なので、今は学校での研修を考えています。

農家研修では「評判の悪くない」農家で学ぶ

もう一つ、この本から紹介させていただきます。これは、研修先の評判により選択の幅が狭まってしまう話です。

”(本当にあったこと)
農家研修を終えて農業委員会に農地探しをお願いすると、必ずどこの農家で研修したかと聞かれます。次の会話は、新規就農希望者と農業委員会事務局担当者の会話です。

「あなたはどこの農家で研修しましたか」
「はい、イマイチ農場(仮称)で2年間研修しました。」
「イマイチ農場の研修生には農地を貸せないかもしれない。」
「えっ?なぜですか?」
「あそこの農場は草を取らない自然農法だろ。そこの研修生も同じようなことをするから地主さんが嫌がるんだよ。」
「・・・」”(本書から引用)

こんな話が知っている範囲で2件もあったそうです。そのうちの1人の新規就農者は、このことによって研修先を変更したほどだそうです。

こういったことを避けるために、研修先農家を決める前に、あらかじめ相談窓口で農家の評判を聞きましょう。

せっかく2年も研修して、この結果だったら泣けてきますね。
出来るだけ、研修先農家さんの評判もリサーチしておきましょう。

所感

少しだけ紹介させてもらっただけでも、この本のすごさが分かったのではないでしょうか。まさに、通常の就農本には載ってないリアルな内容でしたよね。
正直、他の就農本にはこんな裏話的なこと書いてありませんでしたよ。研修先の農家の評判で農地の取得が決まるとか怖すぎです!先に知っておいて良かったですホント。
この他の章も、項目ごとに掘り下げた事がかなり詳しく書いてあるので、色々調べすぎて頭を整理したいような人にもオススメの1冊になってます。
しかも、電子書籍という事もあり、外出先で就農準備について考えたくなった時にスマホですぐ確認できます。私も外でよく見返しています。

何度も言いますが、新規就農を目指しているならこの本は絶対に読んでおいた方がいいです。学べることが多いです。
「新規就農のその後・・・」として、この本の続編も出ているので、そちらもチェックすることをオススメします。