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農業関連

知りたくなかった!農業界の真実。

「日本は食料自給率が低い」、「農家も高齢化してきているし、担い手が少ない」、「耕作放棄地も増えていて、このままだと日本の食品は外国産ばかりになってしまう」
昨今、メディアで騒がれている食糧問題。これに歯止めをかけるべく就農を志した方も多いのではないでしょうか。かくいう私も、就農を目指している理由の一つに、こういった社会問題を解決したいとの思いは持っています。
しかし、ちょっと待ってください!・・・本当にそうなのでしょうか?

今回は、今まで常識だと思われていた農業問題の裏側を指摘している本【日本は世界5位の農業大国(浅川芳裕 著)を紹介したいと思います。

今まで読んできた農業に関する書籍とは、まるで逆の事を言っており、とても興味深い内容でした。そういった意味でも面白く、一読の価値はある本です。
別の視点から農業見ることで、また新しい発見があったりするかもしれませんよ。
では参りましょう!

著者はある組織(お分かりかとは思いますが)を痛烈に批判しておりますが、当ブログは第3者目線という観点から、そこに至るまでの問題は言及していません。

本の概要

この本は、著者が調べ上げてきた”知られざる農業の闇”について書かれている本です。
章ごとの目次は以下の通りです。

  • 第1章:農業大国日本の真実
  • 第2章:国民を不幸にする自給率向上政策
  • 第3章:すべては農水省の利益のために
  • 第4章:こんなに強い日本農業
  • 第5章:こうすればもっと強くなる日本農業
  • 第6章:本当の食料安全保障とは何か

今回は主に、第1章と第4章から抜粋して紹介します。

(注)2010年発行の書籍となりますので、2022年現在とは異なる点がある場合があります。あらかじめご了承の上、本記事をお楽しみください。

「世界最大の食料輸入国」のウソ

昨今、政治家やメディアが一様に自給率向上を叫んでいますが、その根拠として、「日本は世界最大の食料輸入国」であり、「海外に食料の大半を依存している」という前提があります。そういったメディアなどの効果で、おそらく皆さんもこういう認識をもっているのではないでしょうか?
日本は国土が狭く食料自給率が低い。しかし先進国で金はあるから、世界で一番食料の輸入をしている
しかしそれは間違いです。
たとえば、主な先進国での農産物の輸入額(2007年)を比べると、日本はアメリカ、ドイツ、イギリスに次ぐ4位なのです。
確かに世界的に見れば上位ですが、決して世界最大の食料輸入国ではありません
これだけだと、「実は量は多いのに、安く輸入しているから4位なのでは?」と思う人もいるでしょう。しかし、国民1人当たりの輸入量でみても、ドイツ660kg、フランス584kg、イギリス555kgに続き、日本は427kgとこれまた4位。
対GDPの農産物輸入比率で比較しても同順です。ドイツ、イギリス、フランスが2%を超える中で、アメリカはわずか0.6%、日本もたったの0.9%なので、日本の国力に占める輸入食料負担は決して多くはありません。
むしろ、国内生産額で比較すると逆の結果になります。
国際連合食糧農業機関(FAO)の発表だと、日本の農業の国内生産額(2005年)は先進国の中で、アメリカの1775憶ドルに次ぐ826憶ドルの2位なのです。
世界全体で見ても、中国が1位、2位アメリカ、3位のインド、4位のブラジルに続く5位。なんと日本は世界5位の農業大国だったのです。

今まで私も、”日本は国内生産だけでは食料が全然足りていない”という認識だったため、生産額が世界5位だったなんて驚きです!

食料自給率に潜むカラクリ

それではなぜ、日本の食料自給率が低いことになるのでしょうか。そもそも、食料自給率とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
農水省によると、食料自給率とは「国内で供給される食料のうち、国産でどの程度まかなえているか」を示す指標だそうです。
そしてその指標は2つあります。ひとつは”カロリーベース”、もうひとつは”生産額ベース”です。
国やメディアがよく言う「自給率41%」というのはカロリーベースの数字です。
これは国民1人1日当たりの国産供給カロリーを、1人1日当たりの全供給カロリーで割って算出しています。
2008年ですと、国産の供給カロリーが1012キロカロリー、全供給カロリーが2473キロカロリーで自給率は41%となります。

簡単に言うと、「外国産も含め日本国内で摂取しようと思えばできる全カロリーのうち、既に輸出したものも含め日本で生産されたカロリーはどれくらいか」ということです。

ただしここで注意していただきたいのは、分母となる供給カロリーは、私たちが実際に摂取しているカロリーではないということです。
厚生労働省の調査(2005年)によると、流通に出回った供給カロリーは2573キロカロリーですが、私たちが実際に摂取したカロリーは1904キロカロリーだけです。その差は700キロカロリー弱。その700キロカロリーはどこに消えたのでしょう。
その答えは、毎日大量に処分されるコンビニ食品工場での廃棄分や、ファストフード店、ファミリーレストラン、一般家庭での食べ残しです。
つまり、誰にも供給されなかったカロリー分も、分母に入れて計算されていたのです。
他にも、揚げ油のような廃棄比率の高い油脂類も供給カロリーに含まれており、分母のカロリーの15%を占めています。
当然分母である供給カロリーの数値が大きくなるほど、国産の比率(=自給率)は薄まってしまいます。
また、分子の国産供給カロリーには、自給的な農家や副業的な農家、さらに近年急増している家庭菜園で生産される大量の農産物もカウントされていません。
プロの農家が作る農産物であっても、価格下落や規格外を理由に畑で廃棄されているものも、当然分子には含まれていません。
つまり実際の国内生産量、生産力は思っているよりずっと高いことになります。

他にも、牛肉や豚肉、鶏卵、牛乳といった畜産酪農品の場合、実際に日本国内で飼育したとしても、国産のエサを食べて育っていない限り自給率の対象外となるようです。意外ですよね!

食料自給率の落とし穴

自給率が41%ということは、スーパーで売られている農産物の6割が外国産ということになります。
しかし実際はどうでしょうか。畜肉が外国産の方が少し多いくらいで、他は野菜も米も果物も大半は国産でしょう。
それもそのはず、実は野菜の重量換算の自給率は80%を超えています。
このことから、カロリーベースの指標は生活実感にも即していないといえるのではないでしょうか。
実際に、このカロリーベースの指標はあまり意味を成しません。そもそも、食料自給率の計算式に落とし穴があるのです。
前述したように、食料自給率を出すには、国産の供給カロリーを全供給カロリーで割ることで算出します。つまり、単純に食料の輸出入を止めるだけで100%になってしまうのです。
きっと、ほとんどの国民が、「自給率が上がる=国内生産量が増える」ものだと解釈していると思いますが。実は、国産が増えようが減ろうがほとんど関係なく、輸出入さえ制限してしまえば自給率は自然と上がっていくのです。
こんな計算式を使っている以上、「食料自給率」という言葉にあまり深い意味はないということに気付いたでしょう。
ちなみに後進国は軒並み自給率が高いですが、それは海外から食料を買うお金が無い(食料の輸出入が少ない)ためです。

確かに輸入をしなければ国内には国産しか流通しなくなり、必然的に自給率100%になってしまいますね。
今日本で使われている自給率の計算方法だと、あまり意味が無いように思えてきました。

自給率1%向上の中身

2008年は前年に比べて自給率が1%上がりました。なんと11年ぶりに41%となったそうです。しかし、この数字だけを見て、農業全体が活性化してきたと思ってはいけません。
この数字の中身を見てみると、分母の供給カロリーが国産、外国産ともに減少しています。つまり、実際には前年よりも全体の供給カロリーは減ってしまったのに、国産の減り幅より輸入の減り幅のほうが大幅に減少したために、自給率が1%上がったに過ぎないのです。

こんなに強い日本農業

日本はネギ(エシャロットを含む)の生産量で世界一を誇っています。
驚いた方もいらっしゃると思いますが、実は日本の農産物の生産量は昔と比べ着実に増えているのです。

日本の自給率だけをみると1960年に79%あったものが、2005年には40%と約半減していることから、生産量自体が半減したと勘違いされがちです。
実際には、農産物の生産量は1960年の4700万トンから2005年には5000万トンへと増産しています。
ではなぜ、カロリーベースの食料自給率が下がってしまっているのか。
それは、日本の食文化が変わったためです。
昔は生きていくために、米やイモ類などカロリーの高いものを大量に生産、消費していましたが、現在はイチゴやキウイなどをデザートとして食べるようになり、多種多様な野菜や果物を生産するようになりました。
しかし、果物や野菜は総じてカロリーが低いため、どれだけ国産が増えてもなかなか自給率向上にはつながらないのです。
そのため、生産量が増えていても自給率は下がってしまうのです。

生産性の向上はここまできた

日本は少子高齢化社会に入り、農業にもその影響が出ているとよく言われています。
たいていの農業の弱体化の証拠として挙げられるのが、農家の高齢化による農業人口の減少です。
マスコミやメディアでは外国の農業のことなどやらないので、あたかも日本だけが減少しているかのように思いますが、実はそんなことはありません。
過去10年の農家の減少率を比べてみると、日本の22%に対し、ドイツが32%、オランダ29%、フランス23%、イタリアが21%減っています。農家の減少は日本だけではないのです。
日本だけではないにしても、農家が徐々に減っているのは事実です。しかし、前述したように生産量は増えています。これはつまり、農業者1人当たりの生産量が増えたためです。すなわち、生産性が向上したという事になります。
農業者1人当たりの生産量は、1960年の3.9トンに対し、2006年には25トン超。過去40年あまりで6.4倍も生産性が上がったのです。

農家数の減少は何ら問題ない

1人当たりの生産量が増えたということは、そのぶん多数の農家はいらないことになります。
農業者1人の提供カロリーで比較すると、1960年には農業者1人が1年間働いて、たった7人分のカロリーしか提供できていなかったのが、2005年には30人まで賄えるほど効率が上がりました。
これは、経済成長の過程で、技術革新や他産業従事により農業をやめる人が増えた結果、生産効率がよくなったからです。日本は、工業化による経済発展により、人口の多くを農民が占める生活水準の低い後進国から、少数精鋭の農業者が食を担える先進国に成長したのです。

しかも、”それでも日本の農家数はまだ多すぎる”と著者は言います。
それは、先進国での農家が人口に占める割合を見てみると分かります。イギリス0.8%、アメリカ0.9%、ドイツ1.0%に対し、日本は1.6%と高い数字だからです。
実はすでに、日本の少数精鋭の農家は私たちの胃袋の半分以上を支えています。
売上が1000万円以上の日本の農家はわずか7%だけですが、そんな彼らがなんと全農業生産額8兆円のうちの6割を産出しているのです。
しかも、さらに上の売上1億円以上の農場・農業法人はわずか0.25%の5000事業体しかないものの、それらが生産額の15%を稼ぎ出し、過去5年間で160%の成長を遂げています。
もしも、少数精鋭農家の彼らの経営努力で10年後の売上が3倍になれば、わずか5000の業者で今の生産額の半分近くを担える規模になるかもしれません。

日本の胃袋の半分以上が、たった7%の農家によって支えられているとは・・・。そんな精鋭農家の数が倍になれば、もうこれ以上農家は必要なくなってしまいますね。
私も早く追いつかなくてはなりません!

所感

どうでしたか皆さん!今まで常識だと思っていたことが、実は違ったという内容でしたね。
私は軽くショックをうけました。まさか日本の6割の農産物をたった7%の農家が担っているとは・・・。「もう私いらないじゃん」ってなりますよね。
でもまあ、日本の農業に貢献することだけが、私が農業を志す理由ではないので、これからも頑張りますけどねっ!!!

そして、ここでは農業界のウソだけを紹介しましたが・・・気になりません?なぜ国はウソをつく必要があるのか!?
・・・それはここでは紹介できません!w
是非、本をお手に取って確認してみてください!

最後までお読みいただきありがとうございました。ではまたっ!