「農協ってよく批判されているけど、使わない方がいいの?」
これまで農業に携わったことのない人であれば必ず出る疑問ですよね。
確かにこれ・・・ホントに気になります。「実際どうなのよ!」・・・と。
「結局、使った方がいいのか使わない方がいいのか、どっちなのよ!」・・・と。
はい。今回はそんな人達のために、農協の存在意義について中立的な立場から説明している本【絶対にギブアップしたくない人のための成功する農業(岩佐大輝 著)】を紹介したいと思います!
農協がどんな役割を果たしているのかが、具体的に書いてあり分かりやすく非常に良い本でした。
独立就農後に農協を使うか否か・・・。この記事を読み、ぜひ参考にしてください!
本の概要
この本は、3部構成からなる”ツテも農業知識もない人”に向けた新規就農本です。
章ごとの目次は以下の通りです。
- 第1部:農業についてのよくある疑問と不安
- 第2部:農業をはじめるための6つのステップ
- 第3部:モデルケースを見てみよう
今回の農協についての記事は、【第1部 農業についてのよくある疑問と不安】のいくつかの疑問の中から抜粋したものになりますが、正直言って他の疑問もすごい参考になります!
いくつか例をあげると
- 「農業って儲かるの?」
- 「作物を作ったのに売れなかったらどうするの?」
- 「天候が原因で不作になったら、借金まみれになるのでは?」
- 「農地を借りる、買うのはやっぱり大変?」
- 「やっぱり修行に何年もかかるんでしょう?」
- 「補助金って頼るとよくないんでしょう?」
- 「有機栽培の方がいいの?」
- 「どの作物が儲かるの?」
- 「観光農園って儲かるんですか?」
- 「農家になったら24時間365日心血を注がないとダメですか?」
- 「で、結局何を入口にしたらいいですか?」
などなど、今から農業を志す方達がちょうど気になっているであろう素朴な疑問に一つ一つ分かりやすく答えています!あなたもこの中に気になる疑問があったのではありませんか?
その中でも今回は「農協ってよく批判されているけど、使わない方がいいの?」を参考にして記事にしています。
この本は本当にオススメです!ぜひ実際に手に取って一読していただけたらと思います!
では参りましょう!
他の疑問も記事にしたかったのですが長くなってしまうので、今回は私が一番疑問だった農協の事に絞りました!
残りの疑問は、本をお手に取ってぜひご自身でお確かめになってください!第1部だけでも読む価値ありです!
「農協=悪」というイメージ
「農協=悪」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。かくいう私も、この本を読むまではその一人でした。
しかし、それもそのはず。連日メディアなどでは農協を批判し、高い手数料で農家から利益を吸い上げている悪い団体のように紹介されているからです。
農協に関する本の上位は農協を批判する本が上位を占め、逆に農協を擁護する本なんてのは、あまり売れないせいか数が出回っていません。
このような状態ではまだ農業をやってない人からすれば「農協=悪」というイメージになってしまうのは仕方がありません。
しかし、著者は”農村部において農協が果たしている役割は非常に大きい”と言っています。これからそれを詳しく紹介していきたいと思います。
実際私の知り合いの農家の方も、農協を批判してました。
でも結局、農業をやってきていない私には何が悪いのかも分からず、イメージだけが先行してました。
農協を通した方が個人で市場に出すより単価は上がる
まず私が驚いたのは、農協を通さず個人で市場に売りに行く場合よりも、農協を通した方が価格が高くなることが多いということです。
その理由を一言で言うと”農協を通じて市場に売った方が、産地としてのパワーを効かせられるから”です。農業をしていないとなかなか知る機会はないのですが、市場側には「○○産ならこれくらい払ってもいい(=どこの農協のものはいくらだ)」という相場があるようです。
で、なぜそのような相場ができるのかというと、農協は自主的に定めた基準を通過したものしか市場に売らないため、品質が保証されていることがあげられます。また、個人に比べて、一定以上のロット(量)を安定して市場に供給できることも高く買ってもらえる理由の一つになります。
個人の場合、作物のできにムラがあっても、売れそうなものであれば全て農協に持っていくため、一定の品質は保ちづらくなります。また、個人でやっているためどうしても量の確保には限界があります。
そういった理由で、農協を通した方が個人で市場で売るよりも高いことが多くなるというわけです。
個人だと卸売業者との交渉力も弱まります。
その点、農協を通すことでスケールメリットを効かせられ、卸売業者に対する交渉力も強化されるわけですね!
農家と農協と市場の関係
農家と農協、そして市場の関係はどうなっているのでしょうか。
まず、農協に属している農家達が集まり、「生産部会」というものを作ります。そして、その中で作物の品質などに関する”自主的な基準”を作ります。
出荷をする際は、この農協の部会がそれぞれの市場とどれぐらいの量を出荷するかといったことを調整し、その産地のモノとして市場に出荷されます。
そして、それを市場がどうさばくか。
市場はどうさばくか
基本的なさばき方は2つあります。
ひとつは「相対取引」といわれる方法です。
これまでの実績などに基づいて出荷量や価格を決め、それを仲卸業者が買っていく、というものです。
仲卸業者はその後に小売業者(スーパーやレストラン)へ売ることになります。
もうひとつは「入札取引」。いわゆるせりと呼ばれるものです。
量が多すぎてダブついているものや、逆に少なすぎて相対で販売できるほどの量が無いものは、競売にかけられます。
ここで押さえておきたいことは、農家は農協を通じて市場に「出荷」をしているだけで、農協に「売る」わけではないという事です。実際に買っているのは、市場(卸売業者)の先にある仲買人や市場に来ている競り人です。
実際に買うのは市場に買いに来てくれる人たち。
つまり農協は、自分が生産したモノの売り先を見つけてくれる仲介業者のような存在という事ですね。
良い農協の基準とは
ここまでの話でお分かりかもしれませんが、良い農協かどうかの基準は、”個人で市場に売るよりも高く値が付き、農協に手数料を払ってもそれ以上に利益がある”ということになります。そして、そんな農協でなければ使うメリットがないと判断されてしまいます。良い売り先を見つけ、市場で良い価格をつけるようにするのが、農協の介在価値なのです。
では、自分が就農する地域にそういった「良い農協」があれば安泰でしょうか。いいえ、実はそれもまた難しい問題を孕んでいます。
なぜなら、「良い農協」であればあるほど閉鎖的である可能性が高いからです。
この”閉鎖的”であることも農協のイメージを悪くしている一因ではあるのですが、それにもきちんとした理由があります。
たとえば、まだ一定の品質で生産できない新規就農者やあまり努力をしてない農家など、どんな農家でも部会に入れるような農協になってしまうと、物量は扱えても品質の確保が危うくなります。そうすると、市場に対して高く売る力が弱まります。
そのため、自主的な基準を厳しくし、一定の品質で生産できる農家のみを部会に入れるようにして品質の維持をしているのです。
新規就農者からすると排他的に見える場合もありますが、市場に対しての売る力を維持するために必要なことなのです。
逆を言えば、高品質なものを生産できるようになり認められて、一度内側に入れてもらうことが出来れば、強力なパートナーになってくれることでしょう。
安定した品質を保てる農家だけで部会を組織した方が、有利に交渉を進められるということですね。
新規就農者は認められるまでが大変そうですが、なんとかそれまで安定して生産できるよう頑張っていきたいところです。
手数料ってどれくらい?
手数料についてです。
農協を通して発生した売り上げについては、単位農協とJA全農にそれぞれ数%づつ支払います。それが、ざっくり合わせると8%前後。
また、卸売市場に対して支払う手数料が、野菜や果実の場合は7~8.5%前後。
つまり、両方あわせて16%前後かかります。
これを高いととるか安いととるかは個人の思うところですが、農協が無ければ、多くの農家は販売できないのも事実です。卸売業者に対する交渉力も小さくなります。
そういったところに農協が介在する価値があるのだということです。
農協か、直売か
農協の部会によっては、農協を通じて市場に売るか、農協を使わないで自分で売るか(たとえば直販など)が二者択一になっているところもあります。
そういうところが保守的に見え、農協が叩かれる原因の一つにもなっています。
しかし、農協側に立って考えてみると、そうせざるを得ないことが容易に想像できます。
農協は、ある一定以上の品質の作物であれば、全て引き受けなければならないという義務があります。なので、出来の良いものだけ直販で高く売って、出来の悪いものだけ農協に持っていく、ということをされると品質を保てなくなってしまいます。
それにより、「農協を通じて市場で売る」のか「自分たちで販路を開拓する」のかの二択を迫る農協もあるというわけです。
もちろん農協ごとにルールは違うので、全ての農協が完全な二者択一でやっているわけではありません。就農する前に、各地の農協の新規就農担当者に聞いておきましょう。
いずれにしても、農協は長い年月で開拓してきた強力な輸送網を持っています。それを個人で開拓できますか?という話なのです。
確かに、「出来の良いものだけ直販で高く売って、出来の悪いものだけ農協に持っていこう」という考えは、私も最初に思いつきました。
が、やはり世の中そんなに甘くはないですね。
お互い「Win-Win」の関係を築いていけるように、何か考えていきたいです。
農協を使うか使わないかは”農業をやる目的”次第
では結局、農協は使った方がよいのでしょうか。それとも使わない方が良いのでしょうか。
その答えは”農業をやる目的や経営スタイルによる”ということになります。
たとえば、「お客様の笑顔が見たい!」「美味しいという言葉をいただきたい!」ということであれば、農協は使わないでしょう。
また逆に、「客商売は向いていないから、ひたすら作ることに専念したい」ということであれば、農協を使った方がいいかもしれません。
他にも、「生産性をとてつもなく上げて、個人では売れないような量を取り扱いたい!」ということであれば、大手スーパーなどと取引をするか、農協を使うか、メリットを考えてどちらかを選ぶことになります。
ちなみにこの本の著者は、農協を使わないことを選んでます。その理由を一言で言うなら、消費者と生産者が直接ふれあう事が大事だなと思ったからだそうです。
要するに、農協を利用するかしないかは、販路の選択だけを見ても意味がないということです。農業をやる目的や、事業全体の戦略によって決めるべきなのです。
所感
皆さん、農協へのイメージは少しは変わったでしょうか?
農協を使うか否かも、結局は取引の一端であり、メリットがあればデメリットもあります。
観光農園、ネット販売、レストラン経営など、農業にも色々な形があります。
農協を使うか使わないかは、ただ単に販路の選択ではなく、”農業をやる目的”や”自分の理想とする農業のやり方”をよく考えて決めるのが最も良いということですね!
この記事は本の1部を抜粋したものなので、農協を使うメリット・デメリットについてもっと詳しく知りたい方はぜひ本書を読んでみてください。
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